前回のコラムでは「歯の本数」についてお話しました。
今回のコラムでは、「歯の本数の過不足」についてお話していきたいと思います。
歯の本数は、歯並びへの影響も大きいため、矯正治療の診断をおこなう上でも重要な項目となります。
矯正治療をお考えの方もぜひ参考になさってください。
歯の本数が足りない…「先天欠如」
生えるべき永久歯が生えてこないことを「先天欠如」(せんてんけつじょ)と言います。
欠如とは、「欠けて足りないこと」です。
歯胚(歯の卵)が形成されていないため、歯が生えてくることがありません。
2011年に発表されたある調査では、7歳以上の子供10人に1人の子供に”永久歯の足りない歯”があるという結果が出ています。
上あごよりも下あごの歯で欠如が多く、上下左右ともに第二小臼歯(前から5番目)と側切歯(前から2番目)で欠如の発現率が高くなります。
親知らずの先天欠如を含めると、永久歯の先天欠如は30〜40%に上るとされています。
また以下の場合は、先天性欠如歯の確率が高くなるとされています。
- 乳歯に癒合歯がある(癒合歯とは、2本の歯がくっついて1本の歯になった状態を言います)
- 奥歯の乳臼歯が、生え変わらずにいつまでも残っている
- 両親のどちらかに先天性欠如歯がある
※乳歯に癒合歯(2歯がくっついて1歯に)がある場合、その下に生えてくる永久歯が欠如する確率は約40%も高くなると言われています。
先天欠損があるとどうなるの?
先天欠如がある場合、生え変わりが起こらないため、乳歯は残ったままとなります。
乳歯をできるだけ長く残すことを最優先としますが、根が短くて歯質自体も弱い乳歯では永久歯の代わりに一生残すことは非常に難しく、20歳前後で抜けてしまうことも少なくありません。
状態が良い場合は、40歳50歳とさらに長持ちすることもあります。
乳歯が抜けた場合にはその状態を放置すると、周囲の歯が動いたり倒れ込んだりして、歯並びや噛み合わせを乱す原因となります。
また片側のみの欠如の場合、歯列の左右非対称が生じてしまいます。
こうした状況に対する策の一つとして「矯正治療」という選択肢が出てきます。
具体的な治療方法
大まかな矯正治療の方法としては、
- 矯正治療で欠如部のスペースを閉じる方法
- 欠如によって生じた歯列咬合の乱れを矯正治療で整え、欠如スペースに最終的に人工物を入れる方法
が挙げられます。
「先天欠如」の原因は、遺伝や妊娠中の影響・全身疾患・薬の副作用・栄養障害などと考えられていますが、因果関係がはっきりしていないため、予防することはできないとされています。
前回のコラムでも書きましたが、人類は長い期間をかけ、使う部分は発達し使わない部分は退化する過程を辿っています。
その結果、現代では歯の大きさや形が縮小し、歯の本数が足りない人が増えています。
足りないことを知ると原因を探りたくなったり、子供に申し訳ない気持ちになるかもしれませんが、進化の過程で欠如が増えたとなると、規模が大きすぎてどうすることもできません。
現在では、6歯以上の先天性欠如歯を有する場合、健康保険による矯正治療が認められています。
ここまでは、歯の本数の不足についてお話をしてきましたが、次は歯の本数の過剰について話をしていきましょう。
歯の本数が多い…「過剰歯」
乳歯20本、永久歯28本が通常ですが、それより余分に歯がある場合「過剰歯」となります。
歯胚が余分に形成されたり、分裂されることで過剰歯が形成されると言われていますが、理由ははっきりと分かっていません。
過剰歯は、女性よりも男性に多く、上あごの前歯の裏側に比較的多く見られます。過剰歯があると、周囲の歯列が乱れたり、本来生えるべき永久歯が生えにくくなってしまうこともあります。また、過剰歯が生える過程で周囲の歯を圧迫し、周囲の歯の根を溶かしてしまうこともあります。
このような状況を避けるためにも、「先天欠如」と同様に対策の一つとして「矯正治療」という選択肢が出てきます。
過剰歯は、将来的には抜歯をすることが大半ですが、過剰歯の位置・向き・年齢などによって抜歯時期の判断は変化します。あごに埋もれている場合、抜歯の難易度は高くなるため、麻酔や抜歯手術に耐えられる年齢まで経過を見る場合が多くなります。
まとめ
本日のコラムでは、歯の本数とその過不足についてお話しいたしました。
歯の過不足を確認するには、あご全体を撮影できるレントゲン写真の撮影が有効です。
当院では初診時にレントゲンを撮影した際、必ず、歯の本数の過不足を確認しています。
万が一、先天欠如や過剰歯が存在した場合は、それを踏まえた上で現状の歯列咬合についての説明、どんな治療をおこなう可能性があるのか等、説明させていただいております。
ぜひ、前回と今回のコラムを読み終わったら、鏡を見て自分のお口の中を見てください。
歯の本数を数えたり、大きさ・色や形を観察して子供の歯と大人の歯の違いも見つけてみましょう。
(子供の歯と大人の歯が入り混じっていたり、抜けた歯があると、数えにくいかもしれませんが、ご自身の口腔環境を知ることで事前に対処できるかもしれません。)
江戸川区瑞江・一之江・船堀で矯正治療をお考えの方、ステラ矯正歯科にご相談ください。