こんにちは。ステラ矯正歯科です。
2004年をピークにガムの需要は減少し続けていますが、歯科では少し事情が異なります。むし歯や歯周病予防・喫煙補助を目的とした「機能性ガム」や、咬合育成・介護予防を目的とした「ガムを用いた運動療法」がおこなわれており、臨床の場でガムは広く活用されています。
本日のコラムでは「ガムを用いた運動療法」についてお話していきます。
目次
運動療法ってなに?
運動療法とは、主に整形外科領域で用いられる理学療法の一分野で、自身の運動エネルギーを用いて個々の運動器(骨・関節・筋肉)を動かし、症状の軽減や機能回復を目指すものです。
自分でできる運動療法としては、①筋力増強運動 ②筋持久力運動 ③筋弛緩運動 ④関節可動訓練 ⑤協調性訓練などがあります。
理学療法を広義に捉えた場合、鍼灸や柔道整復・リフレクソロジーなどの術者におこなってもらう手技療法や、電気・音波・温熱・振動などのエネルギーを用いた物理療法も理学療法に含まれます。
歯科における運動療法とは?
若年期・成人期・老年期では運動器の特性はそれぞれ異なります。
その特性を踏まえた上で、目的に合った運動療法が実施されています。
歯科における運動療法の主な目的は、①筋コンディションの回復、②口腔筋力の強化、③口腔機能の改善です。※コンディション…健康状態や体調を指します。
一つずつ説明していきます。
①「筋コンディション回復」のための運動療法
筋活動は、基本的に収縮するだけの一方的な動きです。疲労やストレスなどで筋肉が過緊張を起こすと、筋は縮んだまま戻らなくなってしまいます。これがコリ(筋硬縮)となり、痛みや運動異常・形態の歪みを引き起こします。筋コンディションの回復を目的とした運動療法では、筋のスムーズな動きを回復させることがトレーニングの目的となります。
ガムを用いておこなう場合、軟らかいガムを軽い力で噛んで口周りの力をほぐし、息を吐きながら大きく開口するという動作を繰り返します。
②「口腔筋力の強化」のための運動療法
筋肉へ負荷をかけることで筋力強化しますが、荷重や長時間噛み続けるといったオーバーワークは筋の過緊張や硬縮を引き起こすため、NG行為となります。適度な休息をとることが大切です。ガムを用いておこなう場合、硬いガムを用いて、咀嚼筋を強化トレーニングします。
③「口腔機能の改善」のための運動療法
一つの運動の習得には、まずゆっくりした動きを繰り返しおこない、運動指令パターンを脳に記憶させていきます。その後定着すれば、あとは意識しなくとも上手に運動動作をこなせるようになります。(脳に記憶させるまでが相当大変ですが…)
ガムを用いておこなう場合、中程度の硬さのガムを用いて、協調性のトレーニングや舌の巧緻性訓練などをおこないます。
具体的な運動療法
それでは、ガムを使った具体的な運動療法をいくつか紹介します。
どの運動療法をおこなう場合でも共通して意識することは、「口を閉じること・呼吸ができる姿勢でおこなうこと」です。座り姿勢か立ち姿勢でおこないましょう。
骨盤を立てて呼吸をしやすいようにします。
①「お口ポカン」口唇閉鎖に用いられる運動療法
ガムを噛むときの基本である「口を閉じて噛む」ことで「お口ポカン・口呼吸」の改善を期待します。
好みの硬さのガムで、自分の都合のよい時に好きなだけ噛みましょう。
短時間からスタートし、徐々に時間を長くできるようにします。口を閉じ鼻呼吸しながらガムを奥歯で噛みましょう。(ガムを前歯で噛まないこと)
②噛む力のない子供に用いられる運動療法
様々な研究から、噛む力を強くするためにガムを用いたトレーニングをおこなうと筋力が向上するのは妥当なところとされています。
やや硬めのガムを奥歯でゆっくりしっかり噛みます。
1日2回5分間から始め、2週間ごとに1分ずつ増やしていき、3ヶ月続けます。
口を閉じてガムを噛むことが鉄則です。口を閉じることで、しっかり噛みやすくなります。
③舌の巧緻性訓練に用いられる運動療法
※巧緻性(コウチセイ)…器用さ
様々な口遊びすることで、舌や口唇の機能発達が期待できます。
例えば、
①軟らかめのガムを軟かくなるまで噛みます。丸くまとめたら棒状にし、さらに紐状にします。最後に紐状のガムの端を舌で結んで輪っかを作ってみしょう。
②フーセンガムを作ってみましょう。
こうした口遊びを5分ほど繰り返しおこないます。舌の挙上力を使ってガムを上あごに貼り付けるなどの動作も、舌の巧緻性の訓練に役立ちます。
④顔の非対称改善のための、咀嚼側変更に用いられる運動療法
成人になると、右左どちらを使って噛むかという利き側が明確になってきます。それにより若干顔貌の非対称が生じてきますが、通常はほんの些細なものです。
しかし食べ物を強く噛む人やガムを長時間噛む人、筋肉が固くなりやすい人などは非対称が強くなることがあります。このようなときは、噛む側の変更が必要となります。
柔らかめのガムを用意し、利き側でなかったほうのあごでゆっくり噛み、一定のリズムでガム噛む動作を繰り返します。1日2〜3回、1回5分を目安におこないます。
噛む側の変更は、鉛筆やお箸の利き手を変えるぐらい大変な作業のため、習得には時間がかかります。毎日継続していきましょう。
まとめ
矯正治療患者さんに、ガムを用いた運動療法を取り入れて欲しいと思う反面、固定式矯正器具を装着するとガムは引っかかりやすくなり、ガムを用いた運動療法を指導しにくいというジレンマがあります。
ただし、取り外しできる装置を使用している患者さんなら、すぐにでも実践できます。
興味を持たれた方は、ぜひやってみてください。
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︎参考文献/歯科臨床におけるガム徹底活用法