こんにちは。江戸川区瑞江のステラ矯正歯科です。
今回のコラムは「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」という病気について取り上げます。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)がどんな病気で、その原因や対策についてなど基本的なことから、歯科との関わりについてもお話ししていきます。
睡眠時無呼吸症候群=SAS(Sleep Apnea Syndrome) 以下、SASと表記する箇所も出てきます。
目次
睡眠時無呼吸症候群とは
睡眠中に舌が沈下することで上気道が閉塞され、呼吸が止まったり浅くなったりしイビキ・無呼吸・低呼吸が起こる症状をいいます。これはつまり寝ている間に首を締められているのと同じ状況です。睡眠時無呼吸症候群は体が低酸素状態になるので、様々な合併症を引き起こします。自分は眠っていて気づいていないのが怖い部分です。
成人男女の5%程度に見られ、男性での発症がやや多く、好発年齢は男性では40~50歳代、女性では閉経後に増加します。
病気のサインとして、①イビキ、②無呼吸により目が覚めてしまう、③起床時の頭痛や体のだるさ、④日中の眠気、などが挙げられます。発生原因としては「肥満」「下あごが後退している骨格」「扁桃腺やアデノイド肥大」「口蓋垂・舌が大きい」「鼻炎・鼻中隔湾曲」などが挙げられます。
睡眠中は喉の緊張が緩むため、誰でも空気の通り道は狭くなりますが、上記のような原因がある結果、狭い気道に舌が落ち、睡眠時無呼吸症候群が発生してしまいます。
睡眠時無呼吸症候群だとどうなるのか
イビキぐらいなら大したことないのではないかと思いがちですが、睡眠中の低酸素によって高血圧・脳卒中・心筋梗塞を引き起こす危険性が3~4倍高くなり、突然死や明らかな寿命の短さにつながるリスクが跳ね上がります。
また中途覚醒による日中の眠気は、注意力や記憶力などに影響し作業効率の低下だけでなく、居眠り運転事故や労働災害を引き起こす原因となります。SASである人の交通事故発生率は、健常者と比べて約7倍というデータもあります。こうしたことから、SASは社会的にも大きな問題となっています。
睡眠時無呼吸症候群の検査や診断について
問診や簡易検査、睡眠ポリグラフ検査による睡眠中の呼吸状態の確認といった検査などを行います。ポリグラフ検査では、1時間あたりの無呼吸と低呼吸の回数を計測します。
また、SASでは上気道に形態学的異常を伴うことが少なくありません。そのため上気道の視診・内視鏡・レントゲン撮影などをおこなうこともあります。
こうした問診や検査結果によって、SASか否か、またその重症度を診断しています。
(無呼吸が10秒以上かつ、1時間に5回以上であれば、無呼吸症候群と診断されることが多いようです。)
睡眠時無呼吸症候群の治療法
対症療法としては「CPAP/経鼻的持続陽圧呼吸療法」という方法が最も普及しています。
機械からチューブ、鼻マスクを介して持続的に空気を送ることで、狭くなっている気道を広げる治療法です。
また、後退しているあごを前に出すマウスピースが使用されることもあります。
外科的治療法としては、後退したあごを前に出す外科治療を伴う矯正治療や、扁桃腺やアデノイドの外科的摘出がおこなわれています。
肥満が認められる場合は、減量することで無呼吸の軽減が期待できます。また飲酒や睡眠剤は喉の緊張を緩める作用を保つため適量にコントロールすることが大切です。(飲酒は、睡眠の質を悪化させます)
歯科と睡眠時無呼吸症候群
歯列や咬合・骨格の問題が、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の原因の一つとなっていることもあり、その改善策として矯正治療をおこなう方もいらっしゃいます。
先にも出てきましたが、歯科に関わる点なので、もう少し詳しく説明しておきます。
①「マウスピース」を使用する方法
就寝時の下あごの位置を前方に出すことで気道を広げ、イビキや無呼吸の発生を防ぐ治療法です。症状が中度までのSASには比較的効果が見られやすいようですが、症状が重度となると効果は不十分となることも出てくるようです。
②外科手術を伴う矯正治療
矯正専門医や口腔外科の分野になります。下あごが後退している骨格を、外科手術で前方に位置づけることで、その結果、睡眠時無呼吸症候群の改善を期待します。各種資料を基に分析診断した上で、外科手術の必要性を判断するため、SASの症状があっても外科手術の判断が必ず出るわけではありません。
また矯正に加えて手術もおこなうため、治療は長期化しやすくなります。なにより矯正治療と外科手術それぞれのメリット・デメリットをきちんと理解し納得した上で、治療を始め最後までやり遂げることが大切となります。
※どちらの場合にしても、その方のSASの程度とお口の状況によって、期待できる効果は異なってきます。
子供の睡眠時無呼吸
最後に子供のSASについてお話しておきます。
カナダにある睡眠障害センターでは、SASの症状をもつ子供や学生の治療は真っ先に優先されます。なぜなら、SASは成長に対する弊害が大きく、早期に介入すべきだと考えられているからです。
小児SASの発生は1~4%に見られ、好発年齢は2~7歳、発生原因は大人とほぼ同様です。
子供のSASのサインは?
小児SASのサインとして、
①睡眠中のイビキ・浅い呼吸・頻回の寝返り・寝汗・夜尿
②朝起きられない・昼間の居眠り・多動注意力散漫・学習能力の低下・睡眠不足による疲労感
③首を突き出す独特な寝相
④漏斗胸
が見られます。
小児SASを放置すると、慢性的な低酸素状態になり精神遅滞や成長ホルモンの分泌低下に伴う低身長といった問題が起きやすくなるとされています。小児SASの治療方法としては、原因そのものである扁桃・アデノイドの切除や、矯正治療を利用した上あごの拡大が有効とされています。
まとめ
睡眠時無呼吸症候群についてお話ししてきましたが、いかがだったでしょうか。
大人にしても子供にしても誰しも、睡眠中の様子は自分では確認が難しいものです。
原因が一つでも当てはまる方は、もし周囲に尋ねられる人がいれば、睡眠中の様子を聞いてみるのもいいかもしれません。またお子様をお持ちの保護者の方も、SASという視点から、お子様の睡眠や日中の様子を確認してみることをお勧めします。
江戸川区船堀・瑞江のステラ矯正歯科では、問診票や初診時の問診の際、お子様のいびきについて確認するようにしています。いびきがある場合は、耳鼻科や睡眠外来への受診をお勧めすることもあります。また、上顎を積極的に広げたり、下顎の前方成長を促すことで気道を拡大しいびきの改善を目指します。お子様のいびきに気づいたら、成長の活発な時期にご相談ください。