こんにちは!江戸川区瑞江のステラ歯科です。
本日のコラムでは「喫煙の害や矯正治療との関係」についてお伝えしたいと思います。
喫煙歴のある患者さんに久しぶりに出会ったことが、このコラムを書くきっかけとなりました。
近年の喫煙動向・喫煙にまつわる健康被害・歯周病との関係・矯正歯科との関係について取り上げてみたいと思います。
目次
現代の喫煙動向
2019年と少し古い資料に統計になりますが、この時の男性の喫煙率は27.1%、女性の喫煙率は7.6%であり、喫煙者は数十年間減少し続けています。
近年の喫煙傾向として、IQOS(アイコス)などの「加熱式タバコ」を利用する人が増え、特に若年層で好まれています。
加熱式タバコは、専用の器具を使ってたばこの葉やその加工品を電気的に加熱し、発生する煙(エアロゾロ)を喫煙する仕様となっています。
従来のタバコに比べて健康被害の少なさ・臭いが抑えられることを売りに宣伝されていますが、販売からさほど年月が経っていないため、健康への長期的な影響について予測することは現時点では難しいとし、健康被害が少ないと宣伝することを疑問視する声が上がっています。
タバコの煙成分
タバコの煙には、4000種類の化学物質と200種類の有害物質、70種類以上の発がん物質が含まれると言われ、主に①ニコチン、②一酸化炭素、③タール、の3つの有害成分が様々な病気を引き起こす原因となっています。
①ニコチン…
強力な依存性を持ち、若い頃から喫煙を始めるほど依存性は高まります。
②一酸化炭素…酸欠状態を引き起こし、心血管病変の発症・皮膚の老化・胎児の発育不全などを招きます。
③タール…タバコの葉が燃える際に発生する黒褐色の液体で、歯表面に付着する「ヤニ」を指します。粘度が高く水にほとんど溶けないため、歯面や気管・肺に沈着すると体外に排出されにくくなります。
受動喫煙による健康害
上記で示したように、タバコの煙は「百害あって一利なし」と言われるほど健康への被害は大きく、その中でも「受動喫煙」は長年に渡り大きな問題として取り上げられています。
「受動喫煙」が問題となる理由は、タバコに含まれる有害物質が、タバコを吸う「主流煙」よりもタバコの先から出る「副流煙」に多く含まれるためです。副流煙に含まれる有害物質の濃度は主流煙よりもかなり高くなります。
ある調査によると、受動喫煙によってニコチン2.8倍、タール3.4倍、発がん性のあるニトロソアミンという物質に至っては25~100倍と、有害物質の濃度が脅威的に高まるという結果が出されています。
受動喫煙のない社会・妊婦や子供を受動喫煙から守る取り組みは世界中で行われていますが、
現在でも我が国では年間1万5千人もの人が受動喫煙が原因で死亡していると報告されています。
受動喫煙による影響は以下です。
妊婦…胎児の発育遅延・早産・低出生体重・乳児突然死症候群
子供…喘息の発症や重症化・呼吸機能の低下(咳、痰、咳鳴、息切れ)・中耳炎・う蝕・肥満
大人…肺がん・虚血性心疾患・脳卒中・呼吸器への急性影響(臭気・鼻への刺激感)
喫煙者本人に及ぶ健康害
受動喫煙だけでなく、タバコの煙は喫煙者にも多大な健康被害を及ぼします。
がんを始め、脳卒中や虚血性心疾患、呼吸器疾患のほか、II型糖尿病・歯周病・早産・低出生体重・胎児発育遅延など多くの病気と関係し、
『喫煙は予防できる最大の死亡原因』であることは明白となっています。
喫煙を開始する年齢が若いほど疾患のリスクは跳ね上がり、死亡率も高くなります。
受動喫煙をどう回避すればいいの?
喫煙者よりも、非喫煙者の方が健康被害が大きいとするならば、回避したくなるのが当然ですよね。受動喫煙を回避する行動としては、以下が挙げられます。
①禁煙対策の取れたお店を選ぶ
②タバコを吸っている人に近づかない…
無風でもタバコの煙は半径7メートルは広がるとされ、毛髪や衣類に有害物質が付着していたり、肺に残っているとされます。
③喫煙直後の人に近づかない…
喫煙後、45分間は口から有害物質が放出されるといわれています。
2004年、世界で初めて国全体を全面禁煙とする法律がアイルランドで施行されました。
他の国でもそれに倣うように、屋内全面禁煙とする法律が施行され、2020年時点で「67カ国の国」が屋内全面禁煙となっています。(残念ながら日本は該当していません)
喫煙が歯周組織に与える影響
タバコは歯周病招く大きな原因となるため、歯周病の予防進行抑制に、禁煙は必須条件となります。
①ニコチンの持つ「血管収縮作用」によって血流が悪くなり、歯肉に必要な酸素や栄養素が届かなくなった結果、歯周病菌が繁殖しやすい環境となります。
②ニコチンによって血流が悪くなると、歯周病の症状である「歯肉からの出血や腫れ」が出にくくなります。そのため歯周病が重症化するまで気づかないこともあります。
③免疫力の低下・唾液の減少・プラークが付着しやすい環境によって歯周治療が成功しにくくなります。
喫煙と矯正治療
喫煙によって全く歯が動かなくなることはありませんが、一般的に喫煙者が矯正治療を行なった場合、歯の動きは遅くなり治療期間が長くなるとされます。その理由は以下です。
①矯正治療は、歯の土台となる骨が作り替えられることによって歯の移動が行われます。
タバコの有害物質によって、歯肉に必要な酸素や栄養素が行き届かなくなると、歯周組織の再生が制限され、歯の移動が妨げられてしまいます。
②タールの影響によって歯や矯正装置にヤニが付着するとワイヤーの滑りが悪くなり、治療期間の長期化につながることがあります。
禁煙したいと思ったらどうすればいいの?
禁煙治療は、12週間に渡り計5回の診療が行われ、これに対して健康保険が適用されます。
具体的には、貼り薬や飲み薬を使用して禁煙治療を行います。
成功率は約60%で、1年後の成功率は30~40%と低下します。つまり再発性が高いということです。
まとめ
矯正の目的は人それぞれかとは思いますが、審美性の改善・口の中を健康にしたいということは誰しもがもつ共通の目的ではないでしょうか。そう考えたとき、喫煙によってお口の中を害しながらの矯正治療は大変矛盾があり、もったいなくあります。
当院では、喫煙者の矯正治療を初めからお断りすることはしていませんが、禁煙の意思がしっかりあった上で矯正治療を開始していただきたと思っています。